11月24日に東京・御茶ノ水の平和と労働センター・全労連会館ホールで開催された第23回国民の医薬シンポジウムに、ワイエムピーの山田社長とともに参加してきました。全国から112名の参加がありました。
午前の部では、ディオバンをめぐる研究不正の問題について、医師でCMECジャーナル編集長の名郷直樹先生より「歪められた医師主導臨床研究 医療関係者はいかに読み解くか」と題して講演がありました。
|
講演する名郷先生 |
ディオバン事件とは、降圧薬ディオバンの臨床試験が、医師主導の臨床試験であると謳われていたにもかかわらず、ノバルティス社の社員が身分を偽って、臨床試験のデータ解析などに関わっていることが判明し、5大学で行われた試験のうち、京都府立医大や慈恵医大、滋賀医大の3大学でデータのねつ造が明らかとなった事件です。
名郷先生は、EBM(根拠に基づいた医療)のステップとして、論文の読み方を解説したうえで、臨床研究が陥りやすい問題点を、信頼区間や危険率の指標を用いて説明してくださいました。ディオバンのねつ造論文についても、関係する臨床医レベルでのバイアスが研究結果に直結していたり、得られる情報を恣意的に操作できる余地がある点で、臨床研究そのものの信頼性を揺るがす問題であることを感じました。
午後の部では、昨年の医薬シンポジウムでも大きく取り上げたHPV(子宮頸がん予防)ワクチンの副反応被害について、4氏から報告がありました。
被害の実態と支援のあり方について後藤真紀子弁護士から、
実態調査の経過報告について西岡久寿樹先生(東京医科大学医学総合研究所所長)から、
副反応検討部会審議会とワクチンメーカーとの利益相反の問題について関口正人弁護士から、
子宮頸がんの予防にあたり、検診と情報提供の必要性について打出喜義医師(産婦人科)から、それぞれ報告がありました。
どれも大変興味深い内容でしたが、すべては紹介しきれないので、特に印象に残った点だけ書きます。
西岡先生の報告で驚いたのは、このワクチンの副反応症状が難病といわれる病名にも該当しない新種のものであり、その多くが脳や脊髄の損傷によって起きる中枢神経系の症状ということでした。しかもワクチン接種後の1年~3年をかけて入れ替わり立ち替わり現れては消え、長期にわたり患者を苦しめています。脳内環境の異常に起因する新たな病態として「HANS症候群」と名付けたということです。独自に調べた詳細なデータをもとに、厚労省が開示しているデータの誤りも指摘していました。
このように被害の研究がすすんでいても、国や権威ある機関は勝手に枠を設けて、被害を過少に評価しています。もっと患者や被害者に寄り添った医療が行われていかなくてはいけないと切に感じたシンポジウムでした。
(報告者 石川)